記録

何ごともなかったかのように毎日が過ぎていく。
我が家を襲った大事件も、世の中には意味はない。

長男の遺体も28日に無事に送り出した。
残されたネコ達の食欲がないのが気になっていたが、それもようやく元に戻った。
暑い日が続いているのもあるので油断はできないが、これで少し安心。

私の生活は相変わらず忙しい。
6月は仕事の依頼が少なかったが、講習会や講演会の予定を入れてしまったために、通常通りまたは通常以上に忙しくなった。
7月8月も。
だが幸か不幸かそのおかげで、悲しみにふける事はない。

長男の死は本当にあっという間だった。
突然吐いて、手足を突っ張り。
その時には呼吸が止まっていた。
急いで人工呼吸と、脈もなかったので心臓マッサージとを実施をした。
何かを考える余裕もなく。
けれどもいつまでたっても呼吸は戻らず。
瞳孔も開き。

処置を止めたあとも、彼をずっと膝に抱いていた。
彼の身体が動くたびに呼吸が戻ったのかと期待をして様子をみるのだが、それは私の膝が動いているのだった。

彼の口にキスをするのが好きだった。
ネコの、獣の口にキスをするのは衛生的によくないのは十分にわかっているが、キスをするとびっくりした顔をするのが面白く、私は度々彼の口にキスをした。
ヒトと違った口の形。私の唇に当たる彼の牙の感触。
それは幸せな記憶で。

その感触の記憶が、悲しいものにすりかわってしまった事がつらい。