昨日、みた夢

かつて失ったものの夢をみた。

それは引っ越しの日で。
何も荷物を運び込んでいない新居に、家族だけ先にあがりこんだ。

父と。
母と。
姉と。
私の猫たちと。
そして私。

現実には一緒に住む事のなかった猫たちも、夢の中では家族の一員として受け入れられていて、長女はさっそく襖で爪を研ごうとして、皆を苦笑させた。

夢の中では、私はまだ大学生だった。
夢の中でもやはり大学社会から外れていて、行きたくないと家族にぼやいていた。
「まあ、イヤだと思うけど。せっかくだから、もう少し頑張ってみたら?」と母。
大学を辞める事に異を唱えられるのは現実と一緒だけれど、夢の中の言葉は私の心に優しく響き、もうちょっと頑張ってみようかなー、なんて思ったりする。

それは、とても優しい夢だった。
とても幸せな夢だった。
古い木造の香りのする家の中で、みんなが笑っていた。
父と。
母と。
姉と。
私の猫たちと。
そして私。
みんなが揃っていて、そこには、あたたかで穏やかな時間が流れていた。

それは、とても優しく幸せな夢で。
だから眼が覚めた時、泣きたくて仕方がなかった。
意識していなかった、失ったものへの憧憬を、まざまざと見せつけられてしまったので。
夢見ても、仕方ないのに。

あれは、
夢。
かつて欲しいと願い、
得られず、
捨てられ、
捨てた、
夢。