無題

21日の記録

杖を買った後、スーパーのペット売り場に行った。
沢山の動物が見たくなったのだ。
売り場には望みのとおり、沢山の子猫と子犬。
店員さんや子猫、子犬達の邪魔にならないように気を付けながら、一匹ずつ、顔を覗きこんだ。

中に見覚えのある顔があった。
二月に死んだ、あの子の面影のある顔。
あの子は立派な雑種でその出自はわからなかったが、その母ネコは雑種ながらも長毛種の血を濃く現わした外貌を持っていた。
だからその母ネコの血を引くあの子の毛は少し長めでふわふわしていたし、ちょっと鼻が低めの顔つきだった。

ケージの中からこちらを見つめる子猫の顔を凝視した。
よく見ると、全然違う。あの子とまったくの別人(別ネコ)だ。
性別も、年令も、ぜんぜん違う。
それをどうして一瞬でも見間違えたのか。

違うじゃないか。顔つきもなにもかも、違うじゃないか。
あの子と同じ子なんて、この世のどこにもいやしない。
あの子はこの世で唯一の存在で。
あの存在と同じものは、もうどこにもいない。
もう二度と得られはしない。

そう思う一方で。でも子猫の中にあの子の影を見て、そして比べる。
あの子が子猫だった時は…。

涙が溢れ出た。
耐え切れず、心の中でそっと名前を呼んでみる。
流れ出す涙を堪える事は出来なかった。

違うだろう。泣くな、泣くな。
何の為の涙だ?誰の為の涙だ?
私に泣く権利など、ありはしない。

許すな許すな。自分を許すな。
責めて責めて、責め続けろ。