無意識の世界

面白い夢を見た。

私は子どもを出産したばかり。
男の影はなく、どうやらシングルマザーになったらしい。
友人Hとベビー用品売場に買いものに来ているところから、夢は始まる。

友人Hと赤ん坊を抱いている私とで、売場に並ぶベビーカーを選んでいる。
「普通はこうゆうの、出産前から準備しているよね〜」
といやみを言うH。
私はしなくてはならない事には気づいていたが、しなかったのだった。
「今からじゃあ、レンタルっていっても空き無いし。どういうのにするのか、考えている?」
「A型のにしようかなあって」(←夢にしては、やけに具体的)
Hは無言のまま、商品を見比べてくれている。

「で?あとは何を買うんだって?服と、そういえばベビーバスは?」
「お風呂は一緒に入るから、いい。服は、買うと高いよねえ…」
「あー、もうっ。じゃあ、とりあえず今日はどうしてもすぐに必要なものだけ買いな。
日曜日にでも、妹のところから色々お古をもらってきたげるから」
「うん、ごめんね」
「こういう事は、もっと前から言ってよねー。
だいたい、妊娠をしたなんて一言もなし。生まれてから初めて言うなんて、どういう事よ」
Hが、いらだたしげな声で言い募る。

乱暴な口調で文句を言いながら、でも親切で面倒見がいい友人。
忙しくて普段会えないのをいい事に、私は高校時代からの親友Hにだけでなく、親にでさえ妊娠した事を内緒にしていたのだ。
「仕事、どうするのよ。保育園っていっても、空いてないでしょ。
普通はもっと前から、色々と準備をするもんなんだからね」

わかっているけれど、しなかったのだ。まだ生まれていない子どもの為にいろいろと準備をする勇気がなかったのだ。
まだ生まれていない子どもの為にいろいろと準備をして。そして生まれてこなかったら。
未だいない子どもの為に準備したあれこれ。考えれば考えるだけ期待が募り、その夢が断ち切られた時、私はそれに耐えられそうもない。
だから期待をしないように。赤ちゃんを迎える準備をしなかった。

「保育園は探している。無認可とか色々あるし。
空きがどうしてもなかったら、しばらくはベビーシッターを頼むよ…」
Hが「本当に大丈夫なの?」と尋ねるのを聞きながら、私のこういう思考経路はいつもの事なのに、Hがそれを無視をするのもいつもの事だよなあ…と苦笑し。そこで眼が覚めた。