死体の話

昨日は一日中、死体の事を考えていた。
新しく買った漫画の中に、死体の絵、正確には元・人だった部分(パーツ)の描写が多くあり、おそらくそれが原因。

その漫画の作者は高校時代からずっと好きだった漫画家で、とても綺麗な絵を描く。
彼女の描く話はコメディーから追い詰め型の心理劇まで色々あるが、私が好むのは後者で。
新しく買った漫画はそのジャンルに含まれる。

問題の描写は、少年の身体をばらばらに切り刻む(切り開く)犯罪者の、犯行および心理描写のシーン。
解剖書を見て一生懸命研究したのが伝わってくる、非常に詳細で繊細な「部分(パーツ)」の絵。

「でも、ここの質感がちょっと違うのよね〜」
と、突っ込みを入れつつも。
なんとエロい絵なのだろうかと見入ってしまった。
白黒のキレイな絵。
白黒の死体の絵。

白黒でも写真だとグロいと私は感じる。
ついこの前も本をコピーしようとしたら、欲しかった記事の隣に「手首で切断されたって、ほーら、こんな風にくっつけられるんだよー」という症例の記事があり。
そこには切断された手首から先、手の平だけの白黒写真が載っていて、私はそれを平常心では見られず。
その写真を持ち帰る事に耐えられなかった私は、苦労してその写真が写らないようにコピーをした。

でも、同じ写真でもカラーは平気。
あれはただの紙に印刷をされたインクの群。
完全な形の死体であっても、切り開かれた部分の拡大図であっても、平常心で見ている。
文字を読むのと一緒。

ただ、カラー写真でも、樹脂などで処理をされた標本のはグロいと思う。
染色なんてされていたら最低。
触ったらぼろぼろ崩れそうな気がする。(そんな事は、実際にはないのだけれど)
汚くて醜い。

ただのプラスチック製の模型ならばそのツルツルした質感もあってか、 普通に「モノ」を見るのと同じ感覚で、それ自体は別にキレイともキタナイとも思わない。
だが、元・生き物だったその「部分」を加工した標本は、キレイに剥離できなかった表面の質感が、変質した質感が、私に嫌悪感をもよおす。

本物の死体は。
例えグロくても、嫌悪感を感じる事はない。少なくとも私は。

内臓の濡れた質感。
時間が経つと表面は乾いてくる。
日数が経つと腐敗をしたりカビが生えてきたりする。
でも、嫌悪感は感じない。

本物の死体は。
キレイでもないけど汚くもない。

ただ。
臭いのよ。

そんな事を一日中考えていた。