縁切り屋

友人に指摘されて気づいた事がある。
私がすぐに、容易に、人との縁を断ち切ってしまう理由。

私の家はいわゆる「転勤族」で。
だから子どもの頃には、何度も引越しを経験した。

引越しをすれば。
知らない土地。知らない学校。知らない人達。
私は彼らを知らないし、彼らも私を知らない。

過去の私を知る人達はここには存在しない。
過去の私はここには存在しない。
過去にあったいやな体験もここでは存在しない。
全てが白紙。
リセット。

新しい土地で楽しい事があっても、いやな事があっても。
新しい土地っていうのは目新しくて。
だから夢中になって必死になって「生活」をし、「引越し」なんて事を忘れた頃に、またやってくる「転勤」の時期。

そしてまたリセット。
そして、一年たった頃にまたリセット。
リセット。
リセット。

繰り返すうち、それが私にとって自然な事になった。
今のこの環境、人との関係にしても土地がらにしても。楽しい事があってもいやな事があっても。
それは一定時間の後に、全部帳消しに。なかった事になるのだと。
その感覚が、無意識に擦り込まれた。
自分でも気づかないうちに。

私が大きくなり、父が年をとり。
転勤が無くなってから後のしばらくの間、戸惑いがあったのを覚えている。
この、いまの環境、いまの関係が「終わり」にならない事が、何だか不思議だった。

いまだにこの感覚は残っている。
「三つ子の魂百まで」とはよく言った。
私にとっては全ての事は「終る」方が自然だ。

終らないのならば。
終ればいい。と。