祖母の死の意味する事‐1

祖母の話を少ししよう。

先週、祖母が亡くなった。
私はその事を、姉からのメールで知った。
短い文面を読み、私はひどくホッとした。

これで祖母の事について悩まなくてよくなる。
そう思った。

祖母とは一緒に住んだ事はない。
たまの夏休みなどに遊びに行く。
その程度の付き合いだった。
少なくとも私にとっては。
その祖母も病に倒れ、自宅を離れて入院をして、もう十年以上になる。
その間、祖母と会ったのは3回だけだ。

祖母に対して、私の仕事は親族の間で秘密だった。
私の父の実家も母の実家も古くから続く武家のいわゆる名家で、父も母もその両親も、その事を誇りにしていた。
学校の選択にしても、職業の選択にしても、家に相応しいものをと暗に強制された。
そして私は。
私は脱落した。

私にとってはこれは脱落ではない。
本当にやりたい仕事、自分がやりがいを感じられる仕事を見い出し、その道に進んだだけ。
しかし、その仕事は彼等にとっては許容できるものではなかった。
彼等は、人に使われるのではなく使う立場に、人に「凄い」と一目を置かれるような、そして「キレイな」仕事をする人間になって欲しかったのだ。
そうではない、地味な仕事を選んだ私。
だから私の仕事は祖母には秘密にされた。
建て前は、「歳をとったお祖母さまに貴女の仕事の事を説明しても、(どういう仕事か)理解できないわよ」という事になっていたが、理解できないはずはないのだ。
私ではないが同じ仕事をしている人間を、祖母は雇って自分の仕事をさせているのだから。

祖母は私の今の仕事を未だに知らない。
いや、知らないまま逝ってしまった。