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日本産トキが絶滅、佐渡保護センターの「キン」死ぬ

 国の特別天然記念物で最後の日本産トキ「キン」(雌)が死んでいるのを、10日午前7時20分ごろ新潟県佐渡島佐渡トキ保護センター(新穂村)で、職員が見つけた。死因は頭部挫傷と解剖の結果わかった。突然飛び、飼われていたケージのドアに頭部をぶつけたらしい。推定年齢36歳で、人に例えると100歳ぐらいだった。トキは学名ニッポニア・ニッポンで、かつては全国に生息していた。キンの死により日本産のトキは絶滅した。

 キンはうずくまって死んでいた。新潟県によると最近は長く立てず、腹ばいになりがちだった。

 キンは、トキとしては記録上、世界最高齢だった。環境省は、将来の遺伝子技術の発展に期待をかけたトキの「再生」にも備え、肝臓など内臓の細胞を凍結保存する。

 キンのほか、同センターは中国産トキとその子孫を人工繁殖して39羽を飼育している。06年度から野生に戻す訓練を計画しているが、この中に日本産の野生のトキの血を引くものはいない。

 キンは67年夏、佐渡・真野町の水田に迷い込むようになった。愛鳥家だった地元の宇治金太郎さん(84年死去)が保護監視員を任されて、世話をした。幼鳥で人間への警戒心が薄かったこともあり、慣れ親しんだ宇治さんから、直接えさを食べるようになった。

 しかし、国の人工飼育の方針に基づき、翌年3月、宇治さんの手で捕獲された。名前の「キン」は宇治さんの名前から一字を取って名付けられたが、自ら捕獲したことを宇治さんは悔やんでいたという。

 生まれて1年足らずでセンターで人工飼育された。性格的には、非常に行動に慎重な鳥だったという。81年に捕獲された「ミドリ」(雄、95年死亡)と83年からペアリングを始めた。85年には中国の北京動物園から借り受けた「ホアホア」とのペアリングが試みられたが、いずれも繁殖には至らなかった。

 キンは近年、飛び回るような動きはしなくなった。死ぬ直前まで人工飼料のえさを食べていた。

 トキは、江戸時代までは全国各地に生息していた。だが、「朱鷺(とき)」とも表現される淡いピンク色の羽が珍重されて、狩猟が一般化した明治時代以降、乱獲され、大正時代には一時絶滅したといわれた。

 保護への関心が高まり、52年に国の特別天然記念物に指定された。

(10/10 21:58)

http://www.asahi.com/national/update/1010/010.html