イラク邦人殺害 - 3

イラクで襲撃・殺害された奥氏と井ノ上氏。
日本人初の犠牲者という事で、大々的に取り上げられている。
今後のイラク支援にも関わる問題でもあるから当然だろう。

しかし毎度思う事だが、こういう時に悲劇的でお涙ちょうだいドラマ的な記事を生産するマスコミにはへきへきする。
死者の生前の功績を紹介…のみならず、生活暦、家族構成、親族や友人の語る故人の話など、人々の遠慮のない好奇心を満足させる話題の数々。
それらはたいがい事件とは無関係であるだけでなく、混乱状態の遺族や友人たちを無用に混乱させ、事態への対処を困難にさせるように私には思える。
故人の留守宅にマイクを持って押しかけて、そして何を聞くつもりなのだろうか。
遺族はいま、そんなマスコミ対策をしている場合ではないはずだ。
幸いというか、今回は被害者が政府関係者であるから、その家族も外務省が守ってくれるとは思うが。しかし、その心痛はいかばかりのものだろうか。

ただ、そうした記事のひとつが、私に今回の犠牲者の家族構成を知らせてくれた。

奥参事官は、高校生を頭に3人の子供と妻の5人家族で、自宅はロンドン。
上の2人の子供は日本で暮らし、妻と小学生の子供がロンドン在住。
悲報に対して、妻は「(残された)子供が、かわいそう」と漏らしたという。

井ノ上正盛3等書記官は、妻と2歳の長男の3人家族で、妻は12月末に第2子を出産予定で日本に帰国中。
「無理しない方がいい」という周囲の説得にもかかわらず、「夫に早く会いたい」とイラク行きを強く望んだという。

こうしてみると、戦争という殺人の空しさが改めて感じられる。
今も、これまでにも殺されていった人々にも、それぞれの人生があり、家族があったのだ。
それを。
やって、やり返して。
それで何らかの終決にいたったとしても、殺された人たちは還ってこない。
関わった(あるいは偶発的に巻き込まれた)人たち本人の意思とはまた別なところでも起こる戦闘と殺人。

空しすぎる。

(文中の記事のソースは、http://www.mainichi.co.jp/news/selection/20031201k0000m040069001c.html