過去旅行記録‐9

そして、二泊三日の旅の最終日。
この連休中はずっと良い天気で、最終日も晴天だった。

中心地で土産物(といっても、地物のちくわと蒲鉾)を買い、バスにて遊園地へ向かう。
見覚えのない周囲の風景にきょろきょろしながら乗っていると、ふいに見覚えのある風景が現れ、祖母が最後の日を過ごした老人ホームの脇を通り過ぎた。

今回、このホームに行くのは最初から諦めていた。
ホームに行く時にはいつもタクシーを使っていたし、何度も行ったわけではないので、街からどう行くのか、位置関係も何も分かっていなかったし、ホームの名前も憶えていなかったからだ。
それが、何という偶然。
窓辺にしがみつき、ホームが見えなくなるまでずっと見ていた。
食事をしたファミリーレストランも、帰りに寄った小さなスーパーも、変わらずにあった。
遠目に見えるホームは、まだまだきれいで立派に見えた。
何もかもが、いまはただ、懐かしかった。

そして、この旅最後の目的地の遊園地は、昔のままだった。
遊具は多少入れ替えがあったが、ジェットコースターと観覧車はそのままのようだった。
鳥にえさをやり、釣り堀で遊び、一人でジェットコースターと観覧車に乗った。
子供の頃に連れてきてもらった郷土資料館(?)が、遊園地の敷地内にあった事もわかった。

活発な子供だった私は、遊園地にあるような遊具が大好きだったのだが、私の両親は遊園地に子供を連れて行くような人たちではなかった。
寺や美術館などにはよく連れて行ってくれた事を思うと、ああいった場所があまり好きでないのだろう。
両親と共に遊園地に行った記憶は一度だけだ。
思えば、祖父に何度か連れてきてもらったこの小さな遊園地が、私にとっての「遊園地」だった。
今時のと比べるとたわいのない遊具で遊びながら子供の頃の気持ちをなぞり、存分に遊び、ひどく懐かしかった。
タクシーで空港に向かう途中、やはり子供の頃にみた風景を見に寄り道してもらったのを最後に、私は二泊三日の旅を終えた。

行き当たりばったりで、色々な人に融通をきかせてもらい、迷惑をかけ、助けてもらった旅だった。
この旅で、過去の整理をして決着がついたとは思えない。
ただ、置き去りにしてきたいろいろな事を、見直し拾い上げ癒す旅だった。
今回の出発の後押しをしてくれる事となった友人M氏には、感謝をしている。

まさか話をした次の日に私が旅立つとは思ってもいなかったようで、非常に驚かれてしまったが。