呼ばれるままに、歩いてみる

時々、呼ばれるままに歩いてみる。
そんな声、気にするなといわれた事もあるが、私はいまのところ、それはいやではない。

引かれるままに歩いて行くと、街中の誰も気にしていなさそうなお社とか、通りすがりの人たちに戯れに枝という枝を折られた木とかと出会ったりする。
でも、私が出会うものたちには悪意はなく。
ただ、「ここにいる」という事を、私に伝えるだけだ。

今日の出会いもそう。
呼ばれるままに行った先にあったのは、慰霊碑。
関東大震災の時の横死者を祀る碑だった。

でも、死者の気配はそこにはなく、ただ、岩が。
碑文を刻まれた岩だけがそこにいて。
「わたしは、このことをみんなに伝える為に、ここに置かれたの」と穏やかに訴えてきたのだった。