逃げる

何も手につかない。
もう何もしたくない。
世間のなにもかもとの接触を断って、ここでじっとしていたい。
逃げてる逃げてる逃げてる逃げてる。
立ち止まって考えなくては。(何を?)
でも逃げたい。(何から?)
正体も分からない焦燥感。
怖い。
私は一体どこへ行こうとしているのだろうか。

母からの電話。
とたんに明るい声をだす私。

うん、元気だよ。そっちはどう?
こっちの心配なんてしなくていいから。
そっちこそ、もう歳なんだから身体に気をつけてね。

悟られてはいけない。
何もない。何も変わった事は何もない。
私は大丈夫。
何もない何もない何もない…。
私の領域に入ってこられないように。
何もない。だから私の事に口出しをしないで…。

刷り変わっている。
さっきまで考えていたのは母の事ではないのに。
今は母の事ばかりを考えている。
それとも、あの正体のわからないモノは、母だったのだろうか。