独り相撲

心の傷はいつになったら癒えるのだろうか。
もう乗り越えたと思っていたものが、何かの拍子に傷口が開く。
それも、かつては傷とは認識していなかったもの。
諦めの気持ちでそういうものだと、そうしなくてはならないのだと思っていたのが、いや我慢はしなくいていいのだと、諦めずに自分の望みを叶えてもいいのだと、そう他人に言われてそうかと思ったとたんに傷になった。

貴女の言いなりの人生は私の不幸に繋がって、でも貴女の言う通りにしないと許さない貴女に、ならばとことん付合ってやろうと、ほら、貴女の言う通りの人生を歩んだ結果がこれだと、おかげで私はこんなに不幸になったのだと見せつけてやろうと思ったけれど、でも、どこまでいっても貴女は自分の間違いに気付きもしないで、いつも貴女が正しくて、貴女は私の不幸には気付きもしない。
思い余って口を開いてみたけれど、それも貴女が他人を理解するだけの想像力に欠ける人間だという事を私に改めて知らせるだけだった。
一体これまでの私の努力や我慢は何だったのかと無力感に捕われたけれど、私は我慢なんかする必要はなかったのだと。
所詮は神ならぬ人同士。互いに理解しあえない関係というものがこの世にはあるのだと。
それが知れただけでも、これまでの長い年月は無駄ではありませんでした。
私の独り相撲だったけれど、でも、とことんやったから後悔は、ない。

私達は親子で血が繋がっているけれど、それは私達が共通の認識の元にある理解者であるという事を示すものではない。
貴女にはそれは一生理解できない事でしょう。これまで理解できなかったように。
もう、人生の終わりを見据えて生きるしかない老いた貴女に、それを思い知らせるような事態は私も望みません。
知らないまま、逝ってください。
それが私の貴女への愛情です。