選択

バイト先でずっとお世話になっていた女性中堅社員が、今月末で退職をする事を知った。
中堅社員といってもまだ若い。20代後半。
妊娠をしているという事は人づてに聞いていたが、年末に予定している出産の準備に専念(?)する為に退社をするという。

結婚や出産を理由に退職を求めるような社ではない。
逆に営業や企画立ち上げ等、第一線で働いている彼女を失うダメージの方が大きく、遺留もなされたようだ。
彼女自身も気掛かりが大きいと言いつつも、それでも退職の意志は変わらなかった。それが本人または誰かの意志によるものか、もしくは他の事情によるものかは知らないが。

身体の事は大きいかもしれない。
なにしろ忙しい会社なのだ。
フレックス制で始業時間の平均は遅い。朝の10時くらい。
けれども終業時間はとてつもなく遅い。
夜の10時でも、社員の半分はまだ当たり前に残っている。
「どうしても帰りが遅くなってしまうので…」
退職を知って駆け付けた私に、彼女はそう言った。

アルバイト入社をしてからずっとお世話になってきた方なので気持ちの上でも頼りにしている部分が大きく、彼女がいなくなる事はショックだった。
けれどもそれとは違うところで考えてしまう。
彼女のように第一線で働いていた人が仕事を失うという事は、彼女の人生にとってどういう意味を持つのか、という事だ。

出産も子育ても大変な仕事だ。
けれども、仕事と家庭とのどちらを選択するかという選択を迫られる。
それによりキャリアを断たれるリスクは、女性の方が大きいのはまぎれもない現実だ。
どちらを自分とって大きな意味を持っているかは人により異なる。
その価値観の違いにより、またそれ以外のその人の抱えている条件により、どちらを選択するかは違ってくるだろう。
しかし、男性がその選択を迫られる事は、まずない。

私は。
私が結婚をしたくない、誰かに縛られたくないと思う理由は、自分の人生が一番大事だからだ。
なるべくならば誰にも左右されたくない。制約を受けたくないからだ。
仕事と家庭と、などという選択をしたくないからだ。

彼女はどう思ったのだろうか。
彼女は。
いずれにしても、彼女のこれからの人生がより豊かで幸せなものである事を祈る。