中島みゆき

気持ちがどうにも晴れない。
底辺を這いずって浮上ができない。
今はそんな自分に浸る余裕もなく、何とか息をする為に、「元気」をくれるモノがないか街を物色。
買いものでうさを晴らそうという作戦。

こういう時の定番はアクセサリー。もしくは香水。
「これがあれば大丈夫」と自分に暗示をかける。
つまり、一種のお守りだ。
しかし、どちらも今の職場では身に着ける事が基本できない。
ならば、服とか化粧品とか。
それとも気晴らしに、普段なら我慢するような類の「どうしても必要、というわけではない」モノを買おうか。
きれいな写真集とか、部屋に置く雑貨とか…。

店を何軒もまわるが、どうもピンとこない。
そんな時に突然、昔よく聴いていた中島みゆきの歌声を思い出した。
アルバムは買うと高いので、私がもっているのはレコードやCDからカセットテープにダビングしたものばかり。
それも、ここ5年ばかり聞いていない。

急いでCDショップに行く。
売場ではベストアルバムを買おうか迷ったが、去年でたアルバムを買った。
NHKの番組のテーマ曲が入ったアルバムが、気になっていたのだ。

中島みゆきの歌をはじめて聴いたのは、15、6歳の頃。
夢中になって毎日聴いた。旅行にも持っていった。
そしてある日、ぱたっと聴かなくなった。
5年ほどしてから、たまたま人からカセットテープをもらったのをきっかけでまた聴くようになり、その時も毎日毎日一日中聴き、そしてまた、突然聴かなくなった。
それの繰返し。

熱狂的に一日中彼女の歌を聴き、そしてある日突然聴かなくなる。
聴かなくなる事には特にきっかけも理由もなく、あとになってから「最近、聴いていない」という事に気づくのだ。
とても自然に。
これを私的流行とするならば、今回のこれは、第4次流行かもしれない。

久しぶりに聴く彼女の声の持つエネルギーは変わらず、今の自分がそれに飢えていた事を自覚した。
中島みゆきの歌を欲している時。
私は不安で弱く、強いエネルギーを欲しているのだと思う。
強い飢餓をうめる為に、彼女の歌を聴くのだ。
そして、彼女からもらうエネルギーがなくても生きていけるようになったら、自然に欲しなくなるのだろう。

そう、思った。