ジャック・マイヨール

昨年末、ジャック・マイヨール氏の死を知った時は耳を疑った。
今が仕事中でクライアントの前にいる、というのも忘れ、「嘘…!」という言葉がとっさに口をついて出た。

私は彼を直接は知らない。
彼の著作やインタビュー、ドキュメント番組等で知るだけだ。
そこでの彼は、生命力に溢れている人、という印象を私に与えた。
その彼が、自殺。
彼には相応しく無い死に様だと思った。それは非常に勝手な印象なのだが。

自宅で静かに首を吊ったジャック・マイヨール氏。
死の何日も前から孤独を訴えていたという。

「孤独」

その言葉を聞いた時に、改めて衝撃を受けた。

端的に言えば、「老人性鬱」という事になるのかもしれない。
それでも、あれだけ生命力に溢れているように感じられた彼も、孤独に陥り、そしてひっそりと死に向かっていったのだ。
その当たり前の事に衝撃を受けた。

私自身は「生命力」という言葉からは遠い場所に立っている。
私はずっと死んでいる。
精神はもう何年も前からずっと死んでいる。
その事を否定した事もあったが、でもやはり私は死んでいた。
肉体が生きている理由は2つだけで、そしてその1つを失った事により、肉体の死はより現実のものになった。

今の私はジャック・マイヨール氏が羨ましい。
後に残る人の事を考えない、彼の身勝手さが羨ましい。

話はまったく違うのだが、ふと千葉敦子氏のネコの事を思い出した。
彼女も私と同じくネコを飼っていた。
彼女の死後、ネコはどうしたのだっただろうか。
彼女の事だからネコの行き先まできちんと決めてから逝ったのであろうが、その事は彼女の著作に書いてあっただろうか。
思い出せないが、今は本のありかを探す気力がない。
探す気は無いが。しかし気になる。