迷惑

親から。家族ではもうないけれど、遺伝上も戸籍上でも私の親である人からメールが来た。
用件は国民年金の事。

> 万一の時、障害年金無資格では困るので未加入だけにはしないで。

何を突然。
年度切り替えの時期なので、年金の話題が出るのは分かるが、縁を切ったはずの私に何を突然言うのかと。
うんざりした気分でメールを読む。
「何かあったとしても、こちらでは尻拭いをしないからね」という意味だと理解したが、年金を貰うなんてのはまだまだ先の話で、しかもこっちは今日明日消える算段をしている身で。
「わざわざ釘を刺さなくってもなあ…」
現実味を伴わない話に、だんだん空しくなる。

メールを削除をしようとして、しばし考えた。
文中の「障害年金」。
最初に読んだときは「生涯年金」の打ち間違いだと思った。
だが、「国民年金」の事をわざわざ「生涯年金」と言いなおす不自然さ。
引っ掛かりを感じ、考えて、考えて。ようやく思いいたる。
打ち間違いなどではなく、これで正しいのだ。
「障害者年金」。
老齢になる以前に何らかの障害を負い、働けなくなった者に支払われる年金。

そういえば、私が学生の頃に(あの頃は学生には加入免除制度があったようだが)親は私を年金に加入させ、掛け金を支払ってくれたのだが、その時に口癖のように「障害者年金」の事を言っていたのだった。
きちんと年金に加入していないと、万が一怪我でもして障害者になった時に困るから、と。

メールの文面は、私がいつか老人になる将来という、不確かな未来の事を指しているのではなかったのだ。
現在、あるいは少し先の万が一のトラブル。
そうなった時に、こちらに迷惑を掛けるな、と。
そういう意味だ。

やはり、いまはまだ消え去る事はできないという事か。
彼等が保証人となっているいまの住所から引っ越して、戸籍も分籍をして。
書類上でも、まったく綺麗に関係無くなってからではないと。
いま、そうするには時間もお金も足りないのだ。
でも。
生き続けるには、お金がない。仕事もない。
それも現実で。
どうすればいいのか分からない。
どうやってもきっと無駄なのだ。
最初から何もかもが、きっと無駄だったのだ。

どうして、最初から存在しないモノでなかったのだろうか。
存在したのが、きっと間違いだったのだ。