過去旅行記録‐4

二日目の昼に、城下町から空港へ戻るタクシーが取れたので、それに乗って城下町を離れる。
目的地は、母方の祖父母の家だ。

空港からバスに乗り換え、まずは中心街へ。
ネットで調べたホテルにチェックインし、荷物を置いた後、電車に乗って祖父母の家に向かう。
思えば、最後の何年間かはずっと、空港からタクシーを使っていたので、祖父母の家の最寄り駅に降りたのは十数年ぶりのはずだ。
駅から歩いて、記憶を頼りに祖父母の家を探すが、最初の曲がり道で迷った。
しかし、ぐるぐる歩いていると、見覚えのある家並みにぶつかり、それを頼りに探すと、すっかり風景の変わった祖父母の家を発見。
まだ、壊されず、残っていた。
変わってしまった風景に戸惑いながら、しばし呆然とたたずんだ。

祖父母の家は、かつては表門と裏門とがあり、裏門の脇には、斜めに傾いだような古ぼけた借家があった。
もう建て壊さなくてはならないような借家だったが、店子さんが年寄りなので出たがらず、仕方なくそのままにしていると聞いた事があった。
その借家と裏門が壊され、砂利を敷いた更地となっている。
そしてその後ろ、家との境には人の高さもある生け垣が、新しく作ってあった。
表門は残っているが、当然、鍵が閉まっている。
表門の格子の隙間から玄関を眺めると、祖父母と一緒に玄関前で撮った写真が思い出された。

しばらく敷地の周囲をまわった後、また裏門があった更地へと戻る。と、遠目ではずっと続いているように見えた生け垣は実は二重になっており、手前の生け垣の隅が少し空き、家の庭に続く通路口となっている事に気付いた。
無防備に戸も何もなく、おかげで庭に侵入を果たせてしまった。
祖父母の家と土地は、伯父が相続をしているので、これは不法侵入以外の何ものでもない。

祖父母の家は、ちゃんと残っていた。
ただ、庭の物置きが取り壊され、井戸が埋められて更地になっている。
いつも物置きの中に入れていた自転車、これは祖父母の見舞いに病院へ行くのに使っていたものだが、これだけが物置きの跡地にぽつんと置かれていたが、タイヤの空気は抜けていて、使い物にならなくなっていた。
毎年たくさんの実を生らしていた庭の梅の木と柿の木は、無くなっていた。

がらんとした風景に寂しくなりながら、庭から家の周りをまわった。