過去旅行記録‐7

祖父はそれ以来ずっと寝たきりのまま、病院で何年か過ごした後、亡くなった。
あの事は、私の心に刺さった棘だった。
私が祖父を愛せなかったら、うっとおしいと思ったから祖父が倒れたとでもいうような、そんな気がしていた。

祖父は祖父として、ただただ私の存在を愛していたのだった。
今回の旅行で、私はそれを事実として認識した。
カレンダーの裏か何かに、きれいに定規で線を引いて作った連絡表。
おそらくそれは、引っ越したばかりの私の為に、新しく作り直されたのだ。
その表を、記入された私の名前と電話番号を見ていて、何か心につかえていたものが、すとんと落ちた気がした。

私は祖父を愛せなかった。私は祖母も愛せなかった。
かすかな付き合いのあった人として、隣人愛のような愛情はもっていたけれど、ただそれだけでしかなかった。
けれども、そこには愛はあった。
彼等からは多くの愛情を貰ったし、それを嬉しいと思った事も(いつもではないにしても)確かにあったし、そしてその愛情を彼等に返せていたのだと思う。ただ、それを私が認識していなかっただけで。

祖父母の家の縁側に座り、庭を眺めながら、そんな事をずっと考えていた。