無断転載〜ホームレス支援、撤退相次ぐ

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ホームレス支援、撤退相次ぐ 国の補助減で現場はいま
山田史比古、斉藤太郎2016年6月1日12時38分

シェルターの2段ベッドの相部屋で暮らす男性(62)。住み込みの仕事を失い、路上生活も経験したという=3月、静岡県富士市の「富士POPOLOハウス」
 野宿生活者(ホームレス)に対する支援から自治体やNPOが相次いで撤退していることが、朝日新聞と日本福祉大、大分大、日本大による共同調査でわかった。国がホームレス減少を理由に補助を削減したことが要因とみられるが、専門家は国の調査不備を指摘し、支援継続を呼びかけている。

 2014年度にホームレスへ独自に緊急一時宿泊施設(シェルター)を提供するか、府県のシェルターを提供したのは79市。各市に問い合わせたところ、15年度は前橋、松山、長野県岡谷、愛知県一宮、兵庫県尼崎、西宮、愛媛県今治沖縄県糸満など14市で提供をやめていた。なお、東京特別区は都の外郭団体を通じて提供、大阪府の各市は府と共同提供しているため、調査対象としていない。

 また、14年度に国の補助を受けて巡回相談や職業紹介などのホームレス支援をしていたNPOに15年度の実施状況を尋ねたところ、回答した34団体のうち2団体が支援を中止し、11団体が活動を縮小していた。

 背景には国の補助の大幅削減がある。厚生労働省によると、全国のホームレスは今年1月現在で6235人。リーマン・ショック直後の09年より1万人近く減った。減少傾向を受け、同省はシェルターを提供する自治体への全額補助を15年度に3分の2に削減、NPOへの全額補助も14年度いっぱいで打ち切った。

 自治体も支援中止の理由に「ホームレス減少」を挙げる例が多かったが、「国庫補助が減り、費用対効果も考えた」(前橋市)との回答もあった。

 だが、大分大の垣田裕介准教授は「支援によって路上生活から脱却できる人もいた。支援がなくなればまた増えるだろう」と話す。

 日大の後藤広史准教授は「国は実態を把握できていない」と指摘する。後藤准教授らが参加し、民間団体が今年1月に東京都の渋谷、新宿、豊島3区で調べたところ、厚労省調査の2〜5倍のホームレスが確認された。この差は、国が主に日中の公園や駅で調査しているのに対し、民間団体は夜間に調査したためだ。

 厚労省は07年時点で、ネットカフェなど夜間営業店舗を渡り歩く人が全国に5400人いると推定した。日本福祉大の山田壮志郎准教授は「当時も実態に近かったか不明だが、その後も減っていない。多様化したホームレスの実態を把握して支える新たな枠組みが必要だ」と指摘する。

■支援の現場はいま

 全国的に減ったとされる野宿生活者(ホームレス)。その一方で、非正規労働が増え、ネットカフェで寝る人もいる。「貧困ビジネス」が広がる中、住まいのない人をどう支えるのか。支援の現場を訪ねた。

 仙台駅から約5キロの住宅街。静岡県出身の男性(30)はホームレスの緊急一時宿泊施設(シェルター)に3月半ばに入った。

 親と折り合いが悪く、10代で故郷を離れた。東日本大震災後、福島県で除染の仕事に就いた。寮付きだったが、昨年12月で工期が終わり、収入と住まいを同時に失った。

 復興の仕事を求めて宮城に来たが、住所不定では職探しは厳しい。ネットカフェで寝る金も尽き、夜は物陰で寒さに耐え、図書館で昼眠った。県の福祉事務所を訪ね、紹介されたのが、県から委託を受けるNPO法人・ワンファミリー仙台が営むシェルターだった。

 6畳間に2段ベッド二つ。「本当にありがたい」。無料、食事付きだが、飲酒は禁止。ごみ拾いなどの奉仕があり、起床・消灯時間は決まっている。ほかの入所者とも交流し、生活リズムを立て直していく。

 震災後は復興の仕事を求めて東北に来た後、職も住まいも失った人が目立つ。15年度に受け入れた134人のうち57人は復興や除染で働いた経験があり、58人は県外出身だった。「ホームレスの自立には長い時間がかかる。まずは住まいを保障する必要がある」。立岡学理事長(42)は話す。

 若く、就労の経験があれば、住まいを確保することで再就職にもつながりやすい。しかし、シェルターを用意している自治体は多くない。宮城では県と仙台市のみだ。立岡さんは「受け入れを頼んでくる県内の市がいくつもある」と話す。

 静岡県富士市のJR富士駅前。住み込みの仕事を失った男性(62)は雑居ビル内のシェルターに入り「生活保護は受けたくない」と職を探していた。

 NPO法人・POPOLOが運営し、県内10市とホームレスの受け入れ契約を結ぶ。鈴木和樹事務局長(35)によると、入居者には派遣切りにあった人も、引きこもりで自宅を追い出された人もいる。「頑張る気持ちをフォローしたい」と履歴書づくりを助け、企業訪問に付き添う。

 シェルターを持たない自治体がホームレスに安い施設を紹介し、そこを住所に生活保護を受けさせるケースもある。だが、そうした対応には危うさもある。

 岩手県出身で名古屋市のアパートに住む男性(45)は、岐阜県にいた約5年前にがんで職を失い、公園などで過ごすようになった。「生活保護を受けられる」と見知らぬ男に勧められ、名古屋市内の無料低額宿泊所に入った。

 間仕切りで1人分が2畳もない居室は「人の住むところではなかった」。通帳や印鑑を預かられ、保護費は部屋代や食事代としてほぼ全額天引きされた。ホームレス支援に取り組む弁護士の助けで1年後に今のアパートに移れたが、生活保護に頼る暮らしは続く。

 職を見つけて野宿から抜け出す道は険しい。日本福祉大の山田壮志郎准教授は「自立には、悪質でない『当面の住まい』が必要で、シェルターの役割は大きい」と話す。(山田史比古、斉藤太郎)

■ホームレス支援政策の推移

2002年   ホームレス自立支援特措法が期限10年で施行

  08年   リーマン・ショック

  09年度  シェルター提供に国庫全額補助開始

  10年度  NPO支援への国庫全額補助も始まる

  12年   特措法5年延長

  14年度  NPO支援への国庫補助終了

  15年度  生活困窮者自立支援制度が始まり、シェルター提供への国庫補助3分の2に

  17年8月 特措法期限

  18年度  生活困窮者自立支援制度を見直し予定

http://digital.asahi.com/articles/ASJ613H73J57OIPE00N.html?rm=1072

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今でいうブラック企業に勤めていて、深夜に仕事が終わり次の日も朝6時から仕事開始だった15年程前。
自分は毎日漫画喫茶の安いオープンスペース(個室でなく、フロアにリクライニングチェアが置いてある。一晩800円)に泊まり込んでいたが、そこで毎日毎日お会いする高齢女性がいた。
キャリーバッグを引き、椅子に座ると、スーパーの値引き惣菜を広げて食べる。
食べ終わったら寝る。

他の人との交流を求めている様子ではなかったし、自分も気持ちに余裕がなかったので話しかけなかったが。
居場所がない人なのだろうと。そうは察していた。

女性の貧困問題。
高齢者の貧困問題。
あいまった高齢女性の貧困問題。
見えない、見えづらい問題。

自助努力ではどうにもならない問題が、世の中にはたくさんある。