夢を見た。

夢の中で私は郊外の一軒家に住んでいる。
気づいたら家の玄関の扉が開いている。
家の中にネコの姿はなく、慌てて私は外を探す。

その夢の中では、昨年亡くなった長男ネコや長女ネコ、末娘ネコもまだ生きていた。
名を呼ぶと長男と長女、次女、末娘は姿を現わしたので、それを捕らえて家の中に入れた。
しかし次男ネコの姿がない。
名を呼びながら周囲を見回すと、声がする。
声を頼りに探すと、木の上に彼の顔が見えた。

そこには葉が一つもない木が生えていて、彼はかなり上の方の枝の上にいた。
枝に絡みついた紐が彼の身体を枝に拘束していて、彼は助けを求めて哀れな声をあげていた。
彼を助けようと近付くと、彼の姿がよく見えた。

彼には下半身が無かった。

彼の身体は胸から下が失われていて、その(傷とはもはや言いがたい)断面から何かの獣か鳥かに食われた事が想像できた。
その断面に近い彼の毛は赤く染まっているのに、その他の場所の毛は相変わらず綺麗な白だった。
その鮮やかな真白が目を撃った。

信じられない事に、その姿で彼はまだ生きており、私を見て助けを乞うた。
しかし彼が間もなく死ぬ事は、私にはわかった。
側ではカラスが彼を狙っていた。

私は彼を枝から解放しようと手を伸ばし。
そして。彼の上半身だけの死体を抱く自分を想像した私は、
彼に触れる前に手を退き、
そして家の中へ逃げ帰って、扉を堅く閉めた。

家の中にいても、彼の声は一晩中聞こえた。
瀕死の状態で、でも、彼がまだ生きている事を私に知らせた。
家中の扉という扉を堅く閉じ、私はうずくまっていたが、想像の中で彼の姿は容易に見えた。

集まったカラスが彼の身体を突いている。
彼の息があろうとなかろうと構わずに。
だから私はまだ外には出ないのだった。

彼の姿が枝から消えるには、どの位かかるだろうか。
その時間を私は計っていた。
一週間ではまだ早いだろう。
一ヵ月ならばどうだろうか。

しかしそれでも、私はあの木には近付かないだろう。
あの木を視界に入れようとはしないだろう。
もしもそうしたら、彼の白い頭蓋骨が私の罪を責めるだろう。
だから私は自分がしばらく外に出ない事を知っていた。






長い長い夢から覚めると、当然のようにそこに生きた次男がいた。
彼は無邪気に私に甘え。
そして私は、自分の弱さと罪とを改めて知るのだった。